アート&デザインコレクティブglowには、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが所属しています。
このレポートシリーズでは、各回ごとにメンバー1人に焦点をあて、これまでの活動やバックグラウンド、今に至るまでの経歴、今後の制作などについて紹介します。このシリーズを通して、個々のメンバーが抱くビジョンを捉えた上で、それらを重ね合わせたglowのビジョンを浮かび上がらせることを目的としています。第1回は、丹羽彩乃さんを紹介します。
丹羽さんのバックグラウンドを教えて下さい。
大学、大学院ともに実験アニメーションについて研究していました。実験アニメーションとは、作家が独自で編み出した手法で制作されたアニメーションのことを指します。 大学の頃は「画材の質感」に興味があり、小さな画用紙に描いたイラストを高解像度でスキャンすることで画材の粒子感を際立たせる作品などを制作していました。 大学院入学後も「映像の質感」への興味は変わりませんでしたが、「どうしたら卒業後もアニメーションを作り続けられるか?」を強く意識するようになり、「制作の効率化」も自身の中のテーマとなりました。具体的に、一定の原画枚数で様々な質感を描き分けるトレーニングを行ったりしていました。
現在、どのような活動をされていますか?
普段は関西の大学で職員をしつつフリーランスで頂いた仕事をしていますが、空き時間ができたら簡単なGIF制作を継続して行っています。完成度は決して高くはない簡単なものですが、そのとき思いついた手法や絵柄を試したスクラップ集のような役割を果たしています。それらの投稿がきっかけで、同世代のクリエイターさんとコラボレーション・アニメを制作したりもしました。
最近の作品について教えてください。
2020年1月に、サウンドアーティストの具志堅裕介さんと展示「え・おと・いち」を開催しました。ディスプレイを中心にシンメトリーに音を割り振って再生する従来の環境を崩して再配置し、新たな再生環境とサウンドデザインによって、「フレームアウト」を拡張する方法を探る展示でした。 この展示で、わたしはモチーフの設定とアニメーションの作画を担当しました。「フレームアウト」という実際に目に見えないものを鑑賞者に体験させることが目的なため、想像する余白をどの程度鑑賞者に委ねるのかを意識しながらテーマ設定と作画を行いました。
今後取り組みたいことについて教えてください。
アニメーションを活用した広告やデジタルサイネージに興味があります。特に現在取り組んでいるレンチキュラーを用いて、再生機器レスなアニメーション広告に可能性を感じています。
glowに参加した経緯を教えてください。
卒業後、目の前の仕事をクリアしていくことに全力なまま日々を過ごしていましたが、「このままではいつか行き詰まる」という漠然とした危機意識がありました。そんなタイミングで声をかけていただき、glowの「ゆるやかな繋がり」に共感し参加させていただきました。
glowの何に魅力を感じますか?
メンバーの専門領域が多岐に渡るので、普段なら自分ごとに考えられない案件やチャンスも気にかけるようになりました。わたしは専門分野がアニメーションですが、その中でも更に得意不得意が細分化されるので、一人で活動をしていると守備範囲がどうしても狭くなっていくのを感じていました。また、自分も他のメンバーの守備範囲を広げられるような存在でありたいという気持ちから、自身のスキルアップのモチベーションにも繋がっています。
glowに対するビジョンを教えてください。
glowという共同体になることで、「1人では不可能だったことが解決できるようになる」という技術的なビジョンが真っ先に思いつきました。ただ、一般企業のように表現に対する信念や思想みたいなものは必ずしも共有しない、それぞれが信じる表現を突き進んでる道中で繋がったり離れたりしていく、そんなイメージを持っています。