アート&デザインコレクティブglowには、多様なバックグラウンドを持ったメンバーが所属しています。
このレポートシリーズでは、各回ごとにメンバー1人に焦点をあて、これまでの活動やバックグラウンド、今に至るまでの経歴、今後の制作などについて紹介します。このシリーズを通して、個々のメンバーが抱くビジョンを捉えた上で、それらを重ね合わせたglowのビジョンを浮かび上がらせることを目的としています。
第11回は、アーティスト/デザイナー/プログラマーとして活動する柳川智之さん を紹介します。
これまでの経歴について教えてください。
大学ではヴィジュアルコミュニケーションデザインについて勉強しました。
学部4年生の時に石塚英樹先生の授業でJavaを書きはじめ、そこで数学が色や形態に直接関係しあう体験がきっかけで、本格的にプログラミングに興味を持ち始めました。
引数の書き方ひとつとっても、書き手の思考がのせられるんだということをその授業で教わりました。
教材として使用されていた言語が、当時人気のあったActionScriptやProcessingではなく、Javaだったことも自分にとっては大きかったと思います。
当時から広義のデザインではなく、バウハウスから続くような造形思考に惹かれていましたが、それはプログラミングとも親和性が高かったのだと思います。
卒業後は1年間デザイン事務所「schtücco, neucitora」に勤務した後、IAMASの大学院に進学して、ジョセフ・アルバースの『Interaction of Color』の構造分析などの色彩研究をしていました
大学院修了後は母校の武蔵野美術大学の研究室で助手をしながら、同僚の大原崇嘉と一緒に2013年頃からヴァルールについての研究(イメージが視感覚に与える力の感覚量を定量化するプロジェクト)を始めました。
助手の頃は時間があったので、大原と大学で試作と実験を繰り返していました。名誉教授だった勝井三雄先生の研究会に参加して作品を見てもらったり、当時非常勤でいらしていた木本圭子さんに相談に乗ってもらったり、とても贅沢な時間でした。
大原と大学院の同級生だった古澤くんとグループ展をしたことをきっかけに、2017年頃からヨフ(YOF)として3人で活動し始め、現在にいたります。
現在の活動や仕事について教えてください。
ヨフ(YOF)の活動以外には、普段はフリーランスのグラフィックデザイナーやプログラマーとして仕事をしています。印刷物のエディトリアルデザインやWebデザインの仕事の依頼が多いですね。
グラフィックデザインの仕事は自身の研究活動とは完全に切り分けて考えています。やはりデザインの仕事は依頼してくださる方がいること、伝えるべき情報があるので。考え方を両立するのが難しいことが理由です。
その代わり、自分が好きな本や印刷物に対するフェティッシュな部分をすくいあげるようなイメージで取り組んでいます。これは前述のデザイン事務所時代の影響が大きいと思います。
その他にはいくつかの大学で非常勤講師として、色彩やプログラミング演習の授業を担当しています。
今後、取り組んでいきたいことはありますか?
最近はデジタルから物質的なものに関心が移行してきています。以前はデジタル特有の演算性や抽象化のような考え方に魅力を感じていたのですが、だんだんと絵画や写真の方に興味が移ってきました(光源より反射光、流動するものより固定されたもの、と言い換えられるかもしれません)。ヨフ(YOF)としてディスプレイから物質に回帰していっている影響もあります。
グラフィックデザイナーとしては、今は紙の仕事が楽しいので少しずつ増やしていきたいですね。
glowのメンバーと挑戦してみたいことはありますか? ジャンルなど、具体的ではなくてもいいので、あれば教えてください。
小規模なプロジェクトをたくさんやりたいです。実験的な表現を許容してくれて、かつ依頼してくれた方と密にコミュニケーションを取りながらアイデアを出し合える仕事ができると幸せです。
編集 森岡まこぱ
Photo credit
01 ヨフ《2D Painting [7 Objects, 3 Picture Planes]》2019年/Photo:Ryu Furusawa
02 ヨフ《Perceptive Window》2017年/Photo:Michiko Ishikawa
03 《on gradient》2016年
04 「IAMAS 2020 第18期生修了研究発表会・プロジェクト研究発表会」カタログ
05 青柳菜摘+佐藤朋子「TWO PRIVATE ROOMS – 往復朗読」展覧会リーフレット