2020年1月8日〜1月12日、ANTIQUE belle GALLERY(京都)にて、展示「え・おと・いち」を開催しました。この展示では、サウンドアーティストの具志堅裕介さんと共同制作した作品を発表しました。
「え・おと・いち」は、「ディスプレイとスピーカーの再配置による空間認知拡張のための表現研究(研究代表:具志堅裕介)」の一環として開催されました。ディスプレイを中心にシンメトリーに音を割り振って再生する従来の環境を崩して再配置し、新たな再生環境とサウンドデザインによって、「フレームアウト」を拡張する方法を探っています。
会場には、ディスプレイとステレオスピーカーが3セット、それぞれ異なる配置で設置されました。ディスプレイに再生される映像は、「線分が移動する」というアニメーションに3台とも統一されています。映像だけ見るとただの抽象的なグラフィックですが、異なる配置のスピーカーからサウンドが再生されることで、それぞれの質感を想起させ、かつ線分がフレームインする「その前」やフレームアウトした「その先」の動きを想像させることを目指しました。
この展示で、わたしはモチーフの設定とアニメーションの作画を担当しています。
表現研究のテーマ「フレームアウトの拡張」では、「フレームアウト」という実際に目に見えないものを鑑賞者に体験させることが目的なため、想像する余白をどの程度鑑賞者に委ねるのかを意識しながらテーマ設定と作画を行いました。
設置した3セットは「ダンボールをカッターで切断する」「傾斜のついた板に水が滴る」「電車が通り過ぎる」という状況を設定しました。これらのモチーフは「状況を限りなく抽象化したときに線分の移動で様子を表現できること」「身近な現象で鑑賞者の体験に結びつきやすいこと」という2つの条件を指標に決定しました。
アニメーションは、彩度の高いビビッドなカラーで作画しました。鑑賞者に正しく想像してもらうには現実に近い色合い(例えば段ボールなら茶色)で描写することが適切ですが、あえてビビッドなカラーで着色しました。カラーは直感で割り当てたというわけではなく、例えばダンボールのアニメーションでは、ダンボール色(茶色)を限りなく彩度を上げ切ったカラーとしてビビッドな「朱赤」を割り当てています。他のモチーフもそのようにして、現実のカラーリングから彩度を上げ切ったカラーというルールのもと色を設定していきました。これは、あくまでサウンドデザインで質感や重力を想起させる実験であるため、ディスプレイに映るグラフィックからは物質を特定させないために設定しました。